By Magnus Cattan, Head of ICE Data Services (Asia-Pacific)

資産価値とは何でしょうか。
一見単純な質問ですが、新会計基準の適用に伴い日本の金融機関が再考するべき重要な問題です。2021年4月以降、銀行や保険会社などの各企業に対し、バランスシートに関する新たな規制 (企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」等の公表) が課されます。これにより、より厳しい監査への対応が求められます。関連して、取引相手のリスク評価が新たな課題となりますが、これは各企業が最終的に同業他社と同じグローバルの枠組みの中に入るためです。

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この新たな時価算定基準に対するグローバル基準は、2008年の信用危機への対応を契機に設けられましたが、それ以前は多くの金融機関は自身のポートフォリオ上の増加していくリスクに関心を払っていませんでした。当時は取引相手のリスク管理の重要性が強調された時代でした。これは、複数の金融機関がデフォルトとなり、その影響が金融システム全体に波及したためです。

米国や欧州と比較すると、日本は2008年の信用危機が及ぼした影響がそこまで深刻ではなかったため、その後、時価算定基準の改訂はありませんでした。中央銀行が導入するマイナス金利政策を背景に、多くの金融機関は利回りを求めてより複雑かつ高度で流動性の低い資産を保有していきました。国内の民間住宅ローン担保証券や仕組債などがその一例です。このような商品の市場は透明性が低いため、多くの日本企業、特に買い手側の企業は取引相手のみを評価基準として取引を行うことが可能でした。加えて、資産が負債になるのを避けるために、このような金融機関は通常、店頭デリバティブを比較的大きな割合でポートフォリオに組み込んでいました。

今後、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が定める要件に従い、時価算定のために日本企業は自身のポートフォリオの価値を再評価しなければなりません。その対象は、債券やデリバティブの店頭取引を含みます。

この原則はIFRS第13号とおおよそ一致しており、同号はFair Value Measurementについて「測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、資産の売却により受領するであろう価格または負債の移転により支払うであろう価格」と定義しています。

時価算定の根拠及び方法の開示範囲拡大に対し、IFRS第13号およびASBJの要件に従い、「Fair Valueヒエラルキー」に沿って金融資産および負債を分類しなければなりません。

分類方法は下記の通りです。
  • レベル1は、証券市場など、活発な市場における同一品目の市場価格を指します。
  • レベル2は、活発または非活発な市場における類似品目に関する観察可能なインプットを指し、特定の不動産市場における類似の不動産などが含まれます。
  • レベル3は、観察不能なインプットであり、市場が存在しないか、市場の活動がない場合がこれにあたります。この場合の公正価値評価は企業のモデルのパラメーターと入力に対する評価手法を反映したものとなり、非常に恣意的なものとなります。

企業がこのような要件を満たし、適切に対応するためにICEデータサービス(IDS)は、すべてのグローバル資産クラスをカバーする、時価レベリングサービス を提供します。弊社のシステムはICE評価価格に対して、IDSの市場データと観察可能な価格情報を適用し、クライアントが設定するルールに基づき、金融商品がどのヒエラルキーに分類されるのかを算出します。時価レベリングサービスを使用することで、ユーザーは資産がどのように分類されるか、その分類を決定するのはどういったインプットなのかを明確に理解することが可能になります。

カウンターパーティ・リスク

金融取引において、取引相手の支払能力は信用リスクを判断する鍵になります。

信用評価調整(CVA)とは取引相手の信用リスク、またはその取引相手が晒されているリスクから生ずる潜在的な信用損失に基づき、デリバティブ取引価格を調整することです。債務評価調整(DVA)または会社自身の信用リスクは、デフォルトが発生した場合、負債を支払う必要がないことから生ずる潜在的な利益を反映しています。

ASBJの公正価値基準は、DVAとCVA両方の算出および開示を推奨しています。日本の大手地方銀行及びメガバンクは、この数年間CVAの報告はしてきましたが、小規模な地方銀行や保険会社といった機関は、取引をする際にこれらのリスクを算定してきませんでした。よって、取引相手のリスクを適切に把握、管理するためにデータおよび金融工学ツールに新たな投資を行う必要に迫られています。

ICEデータデリバティブは、デリバティブの資産全体を対象とする時価評価サービスや、CVA/DVA計算サービスを提供することで、会計、規制、取引といった幅広いニーズをサポートします。四半期、月次または日次でのレポートが可能となるよう設計がなされ、ICEデータデリバティブ独自のデリバティブ市場データが活用できます。CVA算出時にプロキシカーブとして使用されるCMA CDSグループカーブはその一例で、より精緻な信用リスク分析を可能とします。

グローバルな課題

米国や欧州企業は、長い時間をかけて公正価値基準に適用してきましたが、それでもまだ要件に対する解釈の違いが残っています。これは、多くの企業が、開示を要求されるデータの変化に対応し続け、自身のインプットの検証に第三者独立機関を必要とし続けるということを示唆しています。

これまで日本は「様子見」の状況でしたが、規制への対応期限はすぐそこまで迫っています。ICEデータサービスはグローバルベンダーとして、世界中のクライアントにサービスを提供し、経験から得たメリットを共有し、最適な解決策を見つけ出すことで、日本の金融セクター全体の継続的なイノベーションをサポートします。